3.SfM計測事例
既存地形データとの分解能の差異
GCPの配置と精度への影響
2013年11月伊豆大島の斜面崩壊地形
計測目的:既存の数値地形データとUAV-SfM地形データの定性的な違いの検討
撮影日:平成25(2013)年11月14日
対象地:伊豆大島の斜面崩壊地形
対象範囲:約12 ha
使用カメラと撮影方法:
- Ricoh GR (APS-C 16 Mpx CMOSセンサ、焦点距離18.3 mm)
- UAVにより対地高度50 mから合計578枚の垂直写真を撮影
結果:
- DSM: 分解能 0.09 m
- オルソモザイク画像:分解能 0.02 m
※参考文献:内山庄一郎, 井上公, 鈴木比奈子 (2014) SfMを用いた3次元モデルの生成と災害調査への活用可能性に関する研究. 防災科学技術研究所報告. 81, 37-60.
既存地形データとUAV-SfM地形データの定性的な差異
UAV-SfMデータの特性
- 高分解能
- 既存の詳細な地形データ(5 m DEM)より高分解能
- UAV-SfMにより得られる成果はDSM(地表面数値モデル)であり、DTM(Digital Terrain model: 地形モデル)ではない
- 低コスト・高機動
- 地上/航空レーザー測量に比して低コスト
- 持ち運びが可能な機材の場合、機動性も高い
→精度は未検証
- この事例では精度を検証していない
- 高分解能=高精度ではない
2014年4月福島県西会津の斜面災害跡地
目的:UAV-SfMの簡易的な精度検証
撮影日:平成26(2014)年4月17日
対象地:
- 福島県(西会津方面)の斜面災害跡地(斜面長100 m×斜面幅30 m)
- 撮影範囲:約200 m×約100 m
使用カメラと撮影方法:外部標定要素は無し
- Ricoh GR (APS-C 16 Mpx CMOSセンサ、焦点距離18.3 mm)
- 対地高度50 mと100 mから合計426枚の垂直写真を撮影
地上基準点と精度検証点:トータルステーション (TS)で地上基準点と精度検証点の位置座標を測量
成果:
- DSM: 分解能 0.02 m
- オルソモザイク画像:分解能 0.01 m
※参考文献:内山庄一郎・山村充・井上公・熊井直也 (2014) 小型UAVとSfMによる斜面変動地形の三次元モニタリング, 第53回日本地すべり学会研究発表会講演集, pp.40-41.
GCP設置地点に対するDSM精度の変化
目的:
- 精度を下げるGCP配置の特徴
- 3地点のGCPで得られるDSMの精度
- 撮影範囲に立ち入れない場合の対応
基準データ:
- 外部標定要素なし の写真を使用
- 6地点のGCPを使用して出力したDSM
包囲面積(GCPが囲む面積):1,798.8 m2
(対象範囲の9.0 %)
GCP設置パターンと包囲面積
- Case 1: 842.1 m2(4.2 %)
- Case 2: 157.2 m2(0.8 %)
- Case 3: 942.6 m2(4.7 %)
- Case 4: 11.4 m2(0.06 %)
検証2:基準DSMとの差分:Case-1, 3
Case-1(左):地形面全体が西下がり(東上がり)に傾いている
Case-3(右):基準DSMとほぼ同じ精度
検証2:基準DSMとの差分:Case-2, 4
いずれのケースでも、地形面全体が大きく傾いている
Case-2(左)では北西側が高く、Case-4(右)では北東側が高い
2014年4月福島県西会津の斜面災害跡地
結論:
- 地上基準点(GCP)の配置は、DSMの精度に影響を与える
- 精度を劣化させるGCP配置
- NG例)局地的な配置(GCPが囲む面積が小さい)
- NG例)線状の配置、配置GCP数が少ない
- 外部標定要素がない場合、精度はGCPの影響を特に受ける
UAV-SfMのメリット:
- 計測作業が比較的簡易であり、全体として低コスト化できる
- 局地的ながら迅速かつ容易に高分解能な地形情報が得られる
- 地図情報レベル250クラスの図面を作成できるポテンシャルがある
課題:
- 高い計測精度を求める場合、適切なGCPの配置と高精度な測量が必要